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I'm lost without you.




++I'm lost without you.++




回を選択するとそこに飛びますw
注意:何度も言いますがこの小説は性的表現多なので
引き返す人は引き返してください!
     6〜10はこちらから。
行き先が分からなかったりした。悲しいくらいだった。 それでも泣きたくても泣けなかった。 あいつがいなきゃ、俺はただの迷子だ。 何を目指しているかすら分からないただの迷子。ただのロストマンだ。 「つまらない…嗚呼なんてつまらない毎日なんだ!刺激がない…嗚呼刺激が 欲しい…」 男、サム・テイラー、20歳。職場であるインターネット関連会社で、 会社の前にあるスターバックスで買ってきたコーヒーを飲みながらこぼした。 「刺激、あげようか?」 そう言ってきたのは同僚のクリスティー・ジョンソン。 ブロンドの巻き髪をなびかせ、デスクに乗り上げて、ウインクして笑った。 今にも中身が見えそうなミニスカート。大きな胸元が露わでセクシーなピン ク色のスーツ。 少し、いやかなりドキドキする。 「いや、今ちゃんと居るからハートブレイカーが」 「ん〜あたしじゃダメ?ダーリン。サムだけの秘書になってあげるのに」 「残念ながら。浮気なんて器用な事出来ませんので。しかもお前秘書課じゃな いし」 「何よ、刺激が欲しいって言ったクセに」 確かに言った。刺激が欲しいと。何でもいい。新しい仕事でも、旅行でも。た だ、浮気はダメだろと自制心が働いた。 サムのガールフレンドは同じ社内で秘書課のリーア・ハーグリーヴス。社内の 誰もがホットだと言う彼女は最高な彼女。知的で、艶やかな唇。はっきりとし た顔立ちに横に流した前髪が似合う。クリスティーのようなナイスバディでは ないが、すらっとした四肢。サムと付き合い出す前は誰もが彼女と一晩したい と狙っていた。今はどうかは知らないが。クリスティーがビッチ系ならリーア はその逆。 クリアで清純、かつそれを奪ってみたいと誰もが思う。 「大体サムみたいなののどこに魅力を感じたんだよ、リーア嬢ぉ〜」 そういう嫌味を言うのは同僚のポールだ。ポールは忘れもしない、本気でリー アを自分のものにしたいと思っていた一人だ。ポールの頭は常に女の事。仕事 をしてても遊ぶ事を忘れない究極のマン・アバウト・タウンだ。 「俺だってあの小さい尻にファックしてぇよ」 「てめぇ、よくそんな事ボーイフレンドの前で言えるな。大体彼女居るじゃね ーか」 「もう別れたよあんなビッチ野郎。あいつ、金目当てで男のをサックしてるん だ。とんだプレイガールだぜ」 ポールはパーティーでかなりの確率で女を持ち帰って来るが、このようにかな りの確率で外す。 「そろそろマトモな女落とせよ。プッシー頂いてグッバイなんて付き合いやめ ろよ」 「そう思うけど…じゃあそう言うならイイ女紹介しろよ、リーア嬢並の。おら、 言え!お前の武器は何だ?」 サムは自分の武器とは何か考えてみた。自分の武器…。少し経って口を開いた。 「元ギャングスタ?」 ポールは少し驚いて冗談だろとでも言いたげな表情をした。突然の爆弾発言だ。 「マジ?」 「親父がボスだから」 「嘘だろ?じゃあどういう…」 「ウソ言うかよ。S(ショーン)・テイラー組だよ」 ポールのささやかな驚きが超弩級の驚きに変わった。 「国内ギャングのトップじゃねぇか!!ショーン・テイラーって言ったら!!お前 ん家はスーパーだなぁ!!」 「そーか?親父なんてついこの間までムショでお勤めだぜ。何やってんだって 話だよ。ウチの周りなんか昔、常にギャングまみれだったよ。多分今も」 それをサムはいかにも普通のように話した。親父がギャングのボスで、たまに 刑務所にお勤めするのがサムの日常。ギャングスタが毎日そばにあるのがサム の日常だった。 「じゃあ女とかもハンパなくいるのか?親父さんには」 ポールがまた女の話をしだしたのに少し呆れて、これ以上のクレイジー野郎も なかなかいないなと思った。 「憧れて近付いてくる女はアホな位いたけど、親父はママ一筋だよ。家族は大 切にするやつだから」 サムは嬉しそうに笑って話した。普通とは違う親父の、誰よりも一番誇れる事 だった。 「浮気なんてするくらいなら自殺するよ。まぁあの親父は死んでも自殺なんて しねぇけどな」 「お前の言ってる事意味わかんねぇよ。でも意外だな」 「当たり前だろ。こんな事知ってたら生粋のギャングスタだよ」 だからサムも浮気なんて死んでもしないと決めた。今は、心にいるのはたった 一人。リーアだけ。 ポールとスタバのコーヒーを飲みながら話していると、部長の部屋からリーア が書類を持って出て来た。サムを見るとリーアは笑って近付いて来た。リーア が居る事に慣れないポールはそこに突然お花畑が出現したかのような気分にな った。 「今日仕事終わったらヒマ?」 「ああ、ヒマだけど?」 「映画見に行かない?チケットもらったの、Meet the fockersの。」 「デニーロ?!行く行く。絶対ヒマ!まだ見てないし」 サムは笑顔でリーアに返事をした。というのは、サムはロバート・デニーロの 大ファンだからだ。それはデニーロに親父の面影を見るからかもしれない。 「だと思った。じゃあいつもの所ね!」 そう言い残してリーアが去って行くと、ポールだけでなく職場の男どもの目が うっとりしていた。 「オイオイ…」 サムは誰に言うでもなく呟いた。すると、クリスティーが近付いて来て笑った。 なぜ笑ったのかは分からない。 「今の例の彼女?」 「そうだけど?」 またクリスティーは笑った。笑いの意味は分からない。 「彼女には適わないなぁ〜さすがに。諦めるわ、サムの事は」 そう言ってクリスティーはサムの頬にキスをした。 サムはいきなりの事で少し顔が赤くなり、驚いた。 「お前、サイトデザイン課のマドンナ、クリスティー嬢まで手出してたのか?」 ポールはさらに驚いて尋ねた。この驚き方から見ると、究極のフェロモン女王 クリスティーも狙っていたように見える。 「出してねえよ!あいつが寄ってくるだけ。ってかポール、お前クリスティー も狙ってたのか?」 「当たり前だろ、彼女もかなりホットだぜ!クリスティーに俺のディックを何 とかして欲しいよマジで。まぁリーアには適わねぇよ、トゥーホットさ」 近くに居た同僚、特に女はポールの話す事をあまり聞かないようにしていた。 というのも、ポールの話が欲丸出しの露骨な話だからだ。サムはこのせいでポ ールはガールフレンドが出来ないのではないかと思った。 「…露骨な表現は慎めよ、ここは職場だから」 サムは一応それだけ言ってポールの元を離れた。飲み終えたカップのゴミはゴ ミ箱へ捨ててデスクに戻った。 いつもと変わらない仕事をして、また時間が過ぎていって、平凡な毎日が続く のだ。刺激のない毎日が。 「ねぇポール?」 「おぉ、どうしたクリスティー」 突然クリスティーが背後に現れてポールは少しドキドキした。 ポールの中の社内優先順位はリーアの次にクリスティーだ。 「話があるの」 さっきとはまた違う風にクリスティーは笑んだ。 ポールはいつになく緊張した。 というのも、なかなかこんな上玉の女と二人きりになる事がないからだ。 ポールはクリスティーが自分を呼んだのは、話があるなんていうのは実は口実 で、ホントは…。ホントは給湯室に二人きり、ナイスバディな彼女に誘われて、 社内で声を出さないように濃いキスでもしながら下半身でクリスティーを精一 杯感じる…クリスティーは精一杯自分を受け止めて声を堪えながら… なんて淫乱な妄想をしていた。そんな事になるはずがない。 つまり、それ程ポールの頭の中は女の事と欲求で支配されている。 「話って?」 「ポールはリーアをモノにしたいんでしょ?」 豊満な胸を前面にアピールしながら(少なくともポールにはそう見える)クリ スティーは首をかしげて、尋ねる。 ポールにはこの質問の意図がまだ分からない。 「ああ…ヤリてぇ。でも、アイツはサムの女だぞ?」 「あたしね、実はサムの事諦めてないんだよね。どんな手を使ってもサムの女 になりたいし、とにかく彼が欲しいの。だから…」 「だから?」 「だから、手を組まない?」 クリスティーが笑った。ポールはやっとこの笑いの意味が分かった。と、同時 に心が揺れた。リーアといえば、社内で知らない男は居ないくらいイカしたホ ットな女。高値の花、だから欲望で汚して目茶苦茶に犯したいと思わせる魅力 を備えて居る女。だけどリーアはポールの親友、サムの女だ。ポールの頭の中 では欲と理性が戦っていたが、決着がついた。ポールはクリスティーと同じよ うに笑った。 「いいよ」 「でもなんでみんな俺じゃなくてサムがいいんだよ?」 「ポールはワンナイトスタンドな感じがするから。サムは上手そうだし、グッ ドルッキングガイだし」 「そっちの理由かよ」 ポールはもうサムには完敗だと思った。 Meet the fockersを見終わった二人は、シアターを離れ、感想を話しながら家 へ帰る途中でワインを1本買った。サムのアパートでそれを開けてグラスに注 いだ。 一人暮らしのアパートは意外と片付いている。グラスが赤に染まる。 それぞれベッドに座ってワインを口にする。横のテーブルにはチーズもある。 「やっぱりデニーロ渋かったよねェ。面白かったぁ。あんなパパ欲しいなぁ〜」 「俺の親父みたいなのは?フィルムの中のデニーロみたいなギャングだけど」 「イイよ、サムのパパはカッコいいし。ウチのパパに比べたらさぁ」 「人の親父と比べるなよ。腐っても一生お前の親父なんだから」 サムはそう言うとワインを口にした。 「だよね。サムはいつも正し…ん…」 リーアはサムが話を遮るようにそのままキスをしたのに驚いたが、すぐにそれ に応えた。赤ワインが口元を汚して舌が口内を掻き乱した。サムの唾液と赤ワ インが混ざり、リーアはそれを促されて飲み込んだ。 サムの舌がリーアの唇から首へとだんだん下へ這っていった。 「リーア、服脱いで」 一枚、一枚と薄くなっていって完全にネイキッドな状態になると、リーアもサ ムのを一枚ずつ脱がせていった。サムの舌は悪戯に胸を転がし、優しく噛んで、 吸い上げた。その時のリーアの表情を見るのがサムは大好きだ。 「んっ…はぁ…」 腹に優しくキスをしてまだ下へ這わしていく。所々キスをしながら。指でそこ を苛めながら上手く焦らす。 「あ…んっあぁ…」 「もっと声出していいよ」 舌で激しく弄んで吸うと、リーアの体が小さく震えた。 「んぁあっ…サムっ。いやぁっ」 「嫌ならやめるよ」 「やめないで」 サムはリーアに優しくキスをして笑んだ。両足を持ち上げて押し込むとリーア は泣きそうな、それでも目の前にいるサムをそそる顔をしている。 「あぁっ…もっとっ…はぁ」 「もっと?」 「ん…!!」 腰で動かしながら、舌を絡ませる激しいキスで声を漏らす事も出来ず苦しくて 自然に腰と体が震えた。リーアは頭が真っ白で、シーツを手で掴んで波を作り、 声を漏らしている。サムも声こそあげないが、乱れた鼻息が、男の色っぽい顔 が物語っている。 「んっんんっあぁ…」 激しいキスの間に漏れる声がサムをターンオンさせている。 「もう、ダメ俺、イキそう」 「ん・・・あぁたしもっ・・・」 一段と激しくすると、吐き出した白い世界でリーアを汚して一緒に絶頂を迎え た。のけ反った体が解放感と快感を感じた。快感に疲れ切った愛しい笑顔でサ ムは幸せだった。 「ん?何?」 シーツの波に包まって後ろからリーアを優しく抱いた腕が優しかった。 「何も。リーアはキュートだなぁって」 「そんなことないよ」 「俺の自慢のガールフレンドだよ」 鼻と鼻でキスをして額をくっつけて笑う。子供のような純粋さがそこにはある。 サムとリーアは相思相愛、相性バッチリで誰も絆を引き離しようがない。 クリスティーとポールは二人でイタリアンレストランで夕食を取っていた。 夕食目的というよりは、作戦会議ついでに食事といった感じだ。 円形のテーブルに向き合って二人は座っていた。ポールの中に今まであった緊 張は失せてしまった。クリスティーが予想以上にビッチィだったからだ。まさ かそこまでしてサムをモノにしたいと思っていたのが信じられなかった。 「で、俺はリーア嬢を頂けばいいの?」 単刀直入な質問だった。ぺペロンチーノを口に含んでいたクリスティーは唐突 すぎて吐き出しそうになった。 「モノには順序があるでしょ。リーアを落とすのよ」 ナプキンで口を拭いて自信たっぷりに言った。ポールは不安だった。 「でもリーア嬢は多分手ごわい・・・と思う。しかもサムの女だし」 「大丈夫。二人の喧嘩のタネはあたしがちゃんと作るから。ポールはそこに付 け込むだけでいいのよ。タイミングだけ忘れないでね」 リーアはモノにしたいが、自分からあまりリスクを冒したくないチキン男のポ ールにとってその提案は心晴れるものだった。心の照明がオレンジ色。 「わかった」 それが分かるとポールはすごい勢いでボロネーゼを食した。 「ねぇ、口でサービスしてよ」 「あんたの?」 「契約料代わりだよ。お前一人じゃ出来ないんだろ?」 二人ともアルコールが入って少しいつもと雰囲気が違う。イタリアンレストラ ンで大量に飲んだらしい。ちなみにポールは酒が入るといつも以上にスイッチ オンしてしまう傾向がある。そう言ってズボンのチャックを下ろした。手に持 ってクリスティーの顔をそこに押し付けた。 「サックしろよ」 レストランから少し離れた脇道にあるビルとビルの狭間だった。クリスティー は少し躊躇いながらもそれを口に含んだ。人がまだ通る時間だった。ビルの狭 間にいる二人に気づいた人も居た。クリスティーは舌でそのミートを捏ね繰り 回した。その度にポールのが口の中をだんだん支配していくのが分かった。 「っ・・・はぁ・・・」 それが分かると、クリスティーは先端を吸うように苛めた。ポールは今までに こんな快感を与えてくれる女はいないと思い体が震えた。 「あたしにもやってよ。契約料代わり」 クリスティーがそう言うと、ポールはそのままクリスティーを立たせてミニス カートの中に顔を入れた。すでに少しだけ準備が出来ていたようだ。その辺り を舌で滑らしながら強く吸うと、外にも関わらず気にせず体を反らせて喘いだ。 「ぁぁんっあはぁっ・・・っ」 外だということも忘れてそこに出したままだったそれを差し込むと、二人は情 熱的に求め合った。クリスティーを負いながら足を持って精一杯動く。 人に見られているという事も手伝ってそれはすぐに訪れた。 これはサムとクリスティーの、今日だけのワンナイトスタンドだった。 翌日、またその翌日もポールは何食わぬ顔でサムと職場で会話をしている。 「でさぁ、その女!最高にイイ女でさ・・・」 「どうしたんだよポール。お前が女大絶賛なんて過去に数えるくらいしか・・・」 デスクには山積みになった書類があるにも関わらず笑顔で話している。 「まあね。リーア嬢は?」 「いつも通り、お前に俺たちの情事の話する気ねぇから」 「まぁつれないねぇ、サム兄さん」 手にはいつも飲んでいる、会社前のスタバのコーヒー。目の前には書類、だ。 ポールはやっとその書類の山に気づいて愕然としたが、サムはそれを放ってお いた。ポールはそれでもサムに向かって笑う。 これから自分がやらかすとんでもない事を胸の奥に包み隠して。 サムはここ最近のポールの様子がおかしい事に気付いていた。 理由は分からないが、少し気にしていた。 「お前最近何かあった?」 「俺そんなにハイ?」 「ヘロインアディクト?」 「ドラッグはハイスクールで卒業したよ」 「じゃあ何だよ」 「女?」 そう言うとポールは口笛を吹きながら自分のデスクに戻った。 やはりサムは気になっていた。しかしこれ以上気にしていてもしょうがないと 思い、給湯室に向かった。 「サム、コーヒー?」 そこにいたのはクリスティーだった。 今日もいつものようにセクシーなスーツを見に纏っている。 「何?」 「いや、いつもセクシーなご様子だと思って」 クリスティーは口の端で笑って、インスタントコーヒーの粉に湯を注ごうとし ているサムの方に近付いて来て、サムの唇を無理やり奪った。 手で頭を押しつけられた上、熱いコーヒーを持った手では零すかもしれないの で抵抗できない。歯茎を舌で辿られる。 サムはだんだんとクリスティーが自分に近付いて来ているのに気がつく。豊満 なクリスティーの胸がサムの胸板に押しつけられたからだ。 それでサムは少しだけ下半身が熱くなったのを感じた。 自制心がいよいよサムの中で叫び出したので、唇と体を離した。 口の周りはキスした後の唾液が艶やかに輝く。 「私のセクシーな体も味わっておく?」 クリスティーが悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。 「遠慮するよ」 クリスティーはするとサムのそこを触った。サムはその手をふり払う。 「でもこっちはその気でしょ?今にもハードオンしそう」 「社内でそんな事言うなよ、ポールじゃねぇんだし」 「黙って」 クリスティーは黙ってズボンのチャックを下ろした。 サムの最後の砦を超えるとそれがある。 「おい、やめろよ」 サムは顔だけでなく体が熱くなるのを感じた。それを咥えるとクリスティーは 上目遣いでサムを見る。そこに顔を埋めて舐め回すとサムの体が震えた。 「・・・・・・」 音がするのがまたいやらしくて、官能的でサムは少し抵抗することを忘れてい た。しかしすぐにサムの自制心と理性が再び現れて叫び始めた。 「おい、やめろって。離れろよクリスティー」 「気持ちいいくせに」 「とにかく離れろよ」 「何で?」 「何でって会社だぞここは」 「関係ない」 「ある、あるから離れろ」 「じゃあコレどーするの?」 クリスティーはズボンから出た、上にのけ反ったそれを指差して言った。 サムははぁっ、と溜め息をついた。 「トイレでマスかいてくるよ」 「ふーん」 クリスティーはそう言って離れた。 「お前、クリスティー嬢とヤったんだろ。給湯室で」 デスクに戻るとポールが怒った顔でサムを見ずに言った。 「は?」 「俺がコーヒー入れに行ったらお前ら取り込み中だったから」 サムは少なからず動揺した。 最後までしてはいないとはいえ、お取り込み中だった事には変わりない。 「あれは・・・俺じゃなくてクリスティーが」 「やってくれたんだ?」 「知らねーよ、あんなビッチ女」 ポールは凄い形相でサムを見た。目で人を殺せそうな位鋭い視線だった。 「ああ、あいつはビッチだしマッドだけど」 「女だぞ」 「見れば分かるよ」 「俺のな」 「え・・・?」 「将来的にな」 「お前クリスティー・・・?」 「まぁな。でもその前に一度は味わうべき女がいるからなぁ〜まずそっちから かな?」 味わうべき女って誰だよ・・・とサムは思ったが、少し考えるとある人物が頭に浮 かんだ。ポールがいつもいつも欲しいといっている女。 「お、お前まさか・・・?」 サムがポールの胸倉を掴んで尋ねると、ポールは嫌らしく笑った。 「ああ。多分そのまさかだよ。ボーイフレンドがちょっと遊んじゃったら、し かもそれがオレの(将来的な)女だったなんて・・・そりゃあオレだって何したっ て許されるはずだろ?」 その掴んだ胸倉を思いっきり押して壁にポールを打ち付けると、サムは怒って 冷たい声で言った。 「最低・・・だな、お前」 「ああ、いいよ最低で」 サムは自分のした事、された事を凄く後悔すると同時にリーアが心配だった。 ポールに取られるくらいなら俺がぶっ壊してやりたい・・・とそんな事ばかりが サムの頭の中を過ぎるが、それ以上に自分が許せなかった。 上がり時間までその事ばかり考えていた。 仕事を上がろうとサムがしていた時だった。 事態というのは意外と早くやってきた。 同僚が一斉にその彼女の居るドアの方を向いて感嘆の声を漏らした。 しかしその彼女、リーアはいつもと違う。その時までサムはポールが言ったこ とを忘れていた。しまったと思った。 黒のスーツで秘書課の出来る女、相変わらずの清純そうな雰囲気。 しかし宿している心は今にも爆発しそうだ。萌える朱い薔薇のようだ。 鋭い視線でリーアはサムを真っ直ぐ見つめる。サムはただただいつもは大人し い花のような社内一の呼び声の高い美しい彼女の迫力にのされていた。 周り連中の視線が一気に二人に集まる。 「ねえ、サム。どういう事?」 リーアの言葉には棘がある。 「は?どうしたの」 そんな振りをしても無駄だとサムは分かっていた。 こんなのはただの気休めだって事位。 「ポールから聞いた」 サムの心臓は跳ねた。リーアが怒りそうな心辺りがサムには充分にあった。 胸が痛い。 痛すぎた。 「ヤッたの?クリスティーと」 ざわめいたのは周りで見ていた部署の奴らだけではなかった。サムの心だ。 「襲われた」 半分本当の事を言った。 「嘘!あんたなんか・・・ソン・オブ・ア・ビッチ!最低・・・」 今にも折れそうな線の細い体を震わせて、今にも泣き出しそうに潤んだ瞳をサ ムに向ける。 だけど唇の端を噛んでそれだけは絶対にみせまいと我慢して罵声を浴びせる。 震える体を支えてやりたいと思った。 でもそれはやってはならないのだと知っている。 サムは不本意ながらもそんな関係を少しでも持ってしまったことを本気で後悔 した。 だけどどんな言葉を紡いでも目の前の最愛の人には届かない事も知っていた。 どんな言葉も事実を覆せはしない。 「事実だから何の言い訳もしないよ俺は。だからリーアが俺をダンプしたって 構わない。でも俺はリーアだけが好きだから」 リーアは耐え切れずに近くにあるデスクに寄り掛かって話しを聞く。 「嘘つき」 リーアはそれだけ言って部屋を出ようとした。サムは何か言わなくてはいけな いと思った。 彼女をそれで繋ぎ止めれはしないとわかっていても。 「それだけは嘘じゃないから!」 心の底からの本心だった。 「ねぇサム、別れたならあたしと付き合おうよ」 騒ぎがあったその日の帰りにクリスティーはサムにそう話し掛けた。 本来なら寂しい家路になるはずだった。 会社を出るとクリスティーが居て、何度言ってもしつこくついて来る。 しかたなくスターバックスに入っていつものようにコーヒーを飲む時でさえ側 から消えようとはしなかった。 「マジ無理だから」 はっきり毎回断るのに全く懲りていないこの女にはいい加減苛々する。 「別れたのに?」 まだ別れていない、と言おうかと思ってやめた。 変な期待をかけると悲しくなる。 窓側の丸テーブルに座って飲むのはキリマンジャロ。 スコーンを一緒に食べているサムを向かいにクリスティーは勝手に座って見て いる。 「うるせぇな」 サムがそう言うと、クリスティーは口を河豚のように膨らませて嘆いた。 「何それ、あたし超つまらないし。ポールだけいい所独り占めじゃん」 サムの頭にその言葉はストレートに突き刺さった。 まさかそんな事は少しも考えていなかったがそれしか結果が見えては来ない。 ポール? そうでないと願いたいがそれ以外の真実に相応しいものが見当たらない。 「おまえらまさか仕組んだのかよ?」 サムは今にも血管がはち切れそうな位にこめかみをひくひくさせ、眉間に皺 をよせ、顔がいまにも高揚しそうだ。 それに対してクリスティーはあくまで冷静に笑って答える。 引っ掛かったサムをまるで少し馬鹿にするように笑う。 「そうよ。あたしがサムとデキてポールがリーアとデキるようにね。親友の彼 女だからってポールもかなり最初は嫌がってたけど、やっぱり欲には勝てない ね」 頭が真っ白になった。最悪のシナリオが頭に思い浮かぶ。 最愛のリーアはひょっとしたらひょっとしてポールの手に落ちてファックされ ているかもしれない。サムはクリスティーを睨んだ。 コーヒーをぶっかけてやろうかとか色々考えたが冷静になって全部やめた。 「やってくれたな、お前ら。俺は今までお前ほどのビッチ野郎は初めて見たよ。 報いは文句言わずにしっかり受けろよ?」 クリスティーはそれでもまだ笑う。さらにそれが気に障る。 「ねぇ、だからあたしにすればいいのに」 「ムカつくんだよお前。俺の前から早く消えろよ」 クリスティーが今まで見たこともないような目付きで丸テーブルを思いっきり 叩いた。 コーヒーが揺れる。他の客が一斉に二人を見る。 今にも人を殺しそうな位の恐ろしいオーラを放っている。 クリスティーはいたたまれなくなって、怖くなって逃げるようにしてその場を 立ち去った。 ドアから飛び出すと道にへたりこんだ。汚いとか汚れるとか何も考えていなか った。 それよりも苦しいのはサムだった。 ポールとクリスティーを許せないとばかりに憎みながらも、自分のやってしま った事を考えて今にも泣きそうだった。 空気清浄機で回る室内の空気がサムには肌寒くてしょうがなかった。 「リーア?大丈夫?」 泣きじゃくるリーアの側に付いて慰めるのはポールだった。 「・・・」 夜のオフィスを出ると、リーアは行くあてもなくふらふらと繁華街を抜け、ホ ワイトブリッジ、この街の夜景の綺麗な観光名所にもたれ掛かり、ぼーっと夜 の川を見つめる。 近くにある光りの粒にはリーアが手を伸ばせば今にも届きそうだ。 しかしいつまでも欲しいものは手を延ばしても指の隙間から零れ落ちてしまう。 「あまり気にするなよ」 隣に居てリーアを慰めるポールはリーアの涙に戸惑いつつも、彼女に対する配 慮は忘れてなかった。 ポールはふらふらと繁華街を北に一人で抜けていくリーアをドランクフィリッ プス、ポールが常連になっている居酒屋から出てくる所で呼び止めたのだ。 「サムのバカ・・・」 呟く声は闇の中に消える。 「バカ男」 ポールはただ隣でリーアが嘆くのを聞いていた。 自分で仕掛けた事だと分かっていても、リーアを手に入れるためだと分かって はいても、親友のサムを裏切ったのは少し心が痛んだ。 しかしそれはもう取り返しが付かない。ポールは自分なんかよりサムの方が出 来た男だという事は知っていた。親友に対する劣等感。 しかしポールにはどうしようもなかった。 リーアが今隣で悲しんでいるのも自分のせいなのに関係のないフリをして優し い手を差し延べるしかない。例え心が痛むとしてももう取り返しはつかない。 「あんまり無理すんなよ、俺はいつでも胸貸すから」 「うん・・・」 そう言うとリーアはポールの胸を借りて散々泣いた。 リーアはただただサムが好きでしょうがなかっただけだ。 いつまでも一緒にいたいもの。 この手から離したくないもの。 離したのはリーア自身だ。 ただリーアの心からサムが最後に言った言葉が離れない。 「サムはあたしにはいい人すぎたかな」 ポールの腕に包まれたリーアが顔を見上げるようにして尋ねる。 「リーアがサムにはよすぎる女だからだよ」 そう言ってリーアの頭を撫でる。 こんな純粋で綺麗で花のようにいまにも折れそうなリーアが自分の腕の中に居 るのが嬉しくて、サムに対する罪悪感も全て忘れた。 忘れてリーアに笑いかける。 橋を吹く風も二人で居たら暖かいと思った。 サムは繁華街の一本奥に入った道を歩いていた。 大通りには居酒屋やファッション専門店など華やかな店が立ち並ぶが、一本奥 に入ると雰囲気が変わる。ただ少し暗い通り、柄の悪そうな店、古いビル。 壁にはスプレーで落書き。 しかしそんな道をサムは慣れた足取りで行く。歩き慣れた道。 サムはあるビルの前に止まると、携帯電話を取り出して何処かへ電話を掛けた。 「アリ?俺だよ、サム。ワッツアップ?ああ俺は最悪だよマジで。用?今グレ ーネストの前に居るんだけど、そっち行っていい?話ある。電話じゃダメなん だよ。助かるよ。じゃあ鍵開けとけよ」 電話を切るとサムはその目の前にある白いビル、実はよく見ると煤けて薄いグ レー色の壁。いわゆる普通のビルで、中に会社が入っているらしいが都会的な 高層、セキュリティのしっかりしているものではなく、フロントもない五階建 ての貸しビルだ。一階には不動産屋が間借りしている。 階段で最上階まで駆け上がる。ビルの5階、階段に面した踊り場的な所にはド アが一つ。扉には【gray nest company / established in 1977】という標札。 グレーネストカンパニー。ドアを開けると、高そうな絵画が飾ってある。 それを見てサムは舌打ちすると、廊下を進み、広い空間へ入った。 そこには大勢の男達が居た。 「サムの兄貴、お帰りなさいませ」 ブロンドの青年、全身にタトゥーを刻み白のタンクを着ている奴が言う。 「お前新人?」 サムはその青年に尋ねる。 「はい!3ヵ月前に。アリさんからサムの兄貴の事は聞いてます」 なんだそういうことか、と納得して笑った。 「そう。この世界も危ないからヤラれないように頑張れよ」 笑いかけると、青年も嬉しそうに微笑んで答える。 「はい、頑張ります」 サムはそうして新入り十人強に同じように挨拶をされた。 サムは多すぎて名前が覚えられないなと思った。 談笑していると奥のドアが開いて、女が出て来た。 赤いドレス、ファーのコート。ヒールの音をさせながらサムに近づいてくる。 「サム、久しぶりね」 一歩づつサムに近づいて、サムをじっと見つめる。サムの首に腕を回してキス をした。サムは拒否もしないで笑った。 「おかえり」 「ただいま、かな?シェールお前まだ組に関わってるのか?」 サムは女をシェールと呼んだ。シェールは細身のすらっとした女性で、パーツ の大きい顔に化粧がよく映える。目に留まる部類の女だ。 高いアルマーニのスーツを纏う容姿の調ったサムとよく似合い、またまわりの 雰囲気とも違って優雅だった。 「まあね。今更抜けるわけにもいかないし。ナックも出世したし」 「したのか。よかったな。まだ二人が続いてるなんて意外だよ」 「そう?あたし一途なんだから。しかし二年ぶり?」 「一年ぶりだよ」 「相変わらずサムは素敵」 そう言うとまたシェールはサムにキスをした。 周りに控えている組員が羨ましそうに見る。 「お前、キスしすぎ。奴らにもしてやれよ」 「ふふ。好きな人と親しい人にしかしないの」 笑って舌を出した。サムの知っている中で二番目に美しい女性。 組に関わっているのに心はこんなにも綺麗。嫌いにはなれない友達。 「モデルはまだやってるよな?」 「知ってるの?」 「雑誌で見た。シェール以外のモデルはクソみたいだったよ」 サムは笑って言う。サムにつられてシェールも笑う。 「当たり前。幸せな人は一番綺麗だから。そういえばアリなら奥の部屋で待っ てるよ。あたし連れてこいって言われたんだった」 シェールは笑ってそう言うとサムはシェールを連れ立って奥の扉へと入って言 った。二人の姿が見えなくなると組員からは感嘆の声が漏れた。 「よぉ、久しぶりサム。電話ありがとな」 アリというらしい男は黒いソファに座って言った。部屋にはまだ男が三人居る。 「久しぶり、アリ、ナック、アレックス、ロブ」 そう挨拶すると二人は遠慮する事もなくソファにすわった。 「で、サム。どうした?」 煙草を蒸しながらアリは問う。 アリは組員の中でも幹部なのでしっかりとしたスーツを着ているし狩り上げた 頭から目付きから何からオーラも違う。 「お前らリーア覚えてるか?」 サムは目の前に座るアリとナック、横に座るアレックスとロブに向かって聞く。 「お前の女だろ?」 アリが言う。 「サイコーにヤバイ女じゃん。顔だけじゃないし」 ナックも加える。シェールは他の女の事を褒めても何も言わない。 むしろ自身付け加えた。 「あたしが唯一負ける女性ね」 男性陣が一斉にシェールを見たが本人は気にも留めていなかった。 「親友にハメられて盗られた」 サムはそう言うと情けなくなって頭を抱えた。 隣にいるシェールはサムの肩を黙って二回叩いた。 「俺が女に襲われてファックされかけたことをバラしやがった」 アリは驚いて目を丸くする。 「襲われたってどういう?お前が?」 強いサム。喧嘩すれば強いサムを知っている五人は驚く。 「俺も今の会社楽しいから辞めたくなくて騒ぎ起こしたくないんだよ」 「会社でファック!感動の極致だな!」 ロブが嬉しそうに笑う。 「うるせぇ、黙れロブ。いい話してる訳じゃねぇ。サムはシリアスじゃねーか。 部屋出てろよ」 ナックが茶化したロブに怒鳴って部屋を追い出した。 シェールは嬉しそうにナックを見つめた。 「襲った女とチクった男。俺とリーアを別れさせるために組んでたんだよ、信 じれるか?親友だぞ?あのファッキンアスホール!」 サムは下を、赤い毛の絨毯を見ながら喋り続けた。また悲しくなりそうだった。 「俺マジであいつら許せねぇから」 強い目付きでサムは顔を上げた。この場にいる四人は口々に笑みを浮かべた。 「殺るか?俺は何でもやるよ」 アリはスーツの中からピストル、ベレッタを取り出して笑う。 「それはただじゃおけねぇな」 アレックスが笑う。 「サムは仲間だからな。そんなファック野郎に痛い目みせてやるよ」 「ビッチ女の方はまかせてよ。サムみたいないい男に似合うのはあたしかリー アしかいないって事、精神的に参るくらい分からせてやるから」 シェールも笑う。みんなサムを見て笑う。 なんだか暗い気持ちだったサムもつられて笑う。 「ありがとう。頼むよ。男はポール。女はクリスティー。どっちも俺の同僚。 ポールの方は・・・殺さなくていいから色々遊んでやって。女は・・・シェール頼む よ」 二十畳位の部屋の中で、テーブルを囲んで作戦会議をした。 適当に決めた後サムは思い出した。さっき言おうと思っていたこと。 「お前らそういえば、絵!農民の舞なんか玄関に飾らずにここに飾れよ!一応 ここは会社ってことで間借りしてるんだよ。ルーブルから頂戴した名画があん な堂々とあったらもうすぐお蔵入りしそうなのにパクられるぞ、ポリスに」 「ははは!確かに。こっち移すよ。ルーブル事件ってサムおまえ最後の盗みだ よな?」 アリが懐かしそうに話す。サムもあの頃を思い出しながら話す。 「ああ。盗みはな。最後がブリューゲリなんて最高だよ。今までの盗みの容疑 一件も俺達に向けないなんてポリスもクレイジーだな」 「サムの手筈が最高によかったからな」 アレックスが付け加えた。 とにかくサムは今の所辛い気持ちはしなかった。 置き忘れたものに報いを返すのはこれからだ。 恋人を失くした。親友にも裏切られた。 もう失くすものは何もないから。
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