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遥か、彼方




++遥か、彼方++



――君は何処を見ているの
  君は何を見ているの



森野信二の視線の先には、必ず神崎萌が居た。
森野信二も神崎萌も同じ高校の3年2組で、バスケ部所属だが、2人
はまったく違うタイプだ。
森野信二は顔立ちは整っているが、控えめな性格。
神崎萌は、整った顔立ちに明るい性格。
共通点はあるが、性格に違いが生じすぎている。
その性格故、森野信二は神崎萌の事が好きだが、まだ喋ったことがな
い。
「モリモリ〜、お前はいつも神崎ちゃん見てるなぁ」
森野信二の友人、神岡真はそう言ってからかった。森野信二は顔を赤
くした。控えめな性格だが、男には人気があるし、女子からもコアな
ファンが多い。
「お前はいいよなぁ、そんな性格でさ」
森野信二の友人改め、親友の神岡真はこれもまた森野信二とは真反対
の明るい性格をしている。神岡真はその性格故、毎年文化祭のしきり
役として動かされている。
「行動しなくちゃはじまらねーんだよ、モリ男」
後ろから、数?の教科書で思いっきり森野信二の頭を叩いたのは、渋
谷葵。
「うるせーよ。お前は行動しすぎなんだよ、アオ虫。彼女何人目だよ」
渋谷葵は森野信二に向けて嘲笑するかのようににかっと笑った。
「17人目だよぉーーーん☆モリ男も根性出せよな。便も出せ。便秘
は最悪」
この年の男の会話ってホントにこんなもんだよな、と、手のひらで小
さい丸を描きながら森野信二は思う。
しかし、渋谷葵の言う事も確かだとも思っている。森野信二はこの性
格のお陰で女関係には散々だった。
告白される事は多々あっても、恥ずかしくなって、「お、俺はバスケ
が彼女なんだぁー!!」と、ボールを手に持っていればつい言ってし
まったり。森野信二もA子の事が好きだったのに、友達が「俺、A子
のこと好きなんだ」と森野信二に打ち明けたら、「俺も好きなんだよ
なー」と、言えずに好きなA子と友達が付き合い始めたり。
このお陰で男関係は最高!とはいえ、さすがに彼女が3年間居ない高
校生活もたまんねーよと、森野信二もさすがに思っている頃だろう。




「でわ、これから文化祭のウチの出し物『シンデレラ』の配役を決め
たいと思いま〜す!!」
森野信二は、教室の一番後ろの一番端の席で、ぼーっとしながら聞い
ていた。森野信二は自ら志願して・・・というよりは、くじ引きを狙
って引いて自らこの席を勝ち取った。授業中かなりの確率で当たらな
い席であり、寝ても、早弁をしてもバレない席だからだ。窓側だから、
風も入ってきて気持ちがいい。
いつも、森野信二は空を見ている。
「なーにたそがれてんだよ、森のゆかいな仲間達。お前王子に決まっ
たぞ」
間をあけて隣の席の神岡真がニヤニヤしながら言った。
「はぁ?!マジで言ってんのかよ」
と、言ってはみたが、森野信二は黒板を見ると、口をあんぐり開けて
驚いた。
黒板には王子という役名の下にしっかりと森野信二と書いてある。
「俺様の意見に、お前のルックスのお陰で全員賛成。君の瞳に乾杯☆」
渋谷葵もニヤニヤしながら、どこから出してきたのか分からないが、
グラスに100%のぶどうジュースを注いで隣の席の女子と乾杯した。
「ありえねー!!お前ら何考えてんだよ、クソ野郎」
森野信二は黒板を良く見た。王子の配役の隣の、シンデレラ。シンデ
レラの下には神崎萌の3文字。
神崎萌の方を見ると、こっちを見て笑っている。少し恥ずかしくなっ
て視線を外した。
「そういうことかよ、シブガキ隊」
森野信二は渋谷葵に向かって、言った。手はFACKしていたが。
「おうよ」
ところで、まだ森野信二は神埼萌と一度も喋ったことがない。それな
のに、キスシーンありのこの役はぶっちゃけかなり厳しいはずだ。
「おい、俺はところでホントに王子が出来るのか?」
神岡真にそう尋ねたが、嫌に返事がすぐに返ってきて少しショックだ
った。
「やらなきゃなんねーんじゃね?推薦だし。出来なくてもよ」
はぁ。っと、森野信二は深いため息をついた。逃げ道はなさそうだ。





日直で、森野信二は最後まで教室に残っていなければならなかった。
教室には、あと、森野信二と、神岡真と、神崎萌と、その友達の女。
「おい、小野伸二!お前これはチャンスなんじゃね?!」
神岡真は、日誌を書いている森野信二に息を荒立てて言った。
それに、いいタイミングで、
「ねぇ、萌ちょっとトイレ言ってくるね」
と言って連れの女は教室から出て行った。それにつられて神岡真も
「ねぇ、モリモリ。私もちょっとおトイレ行って来るわねv」
と言って出て行った。教室には神崎萌と森野信二の二人きりだ。
神崎萌は窓の外をずっと見ている。遠く、遠くをいつも。
不思議な空気が教室を包んでいた。外では、サッカー部が練習をして
いる。森野信二は少しだけ、たった少し、いや、かなり勇気を出して
言ってみた。
「神崎さんはいつも遠く見てるね」
森野信二はいつもみたいに顔を赤くしないように意識して声をかけた。
神崎萌は笑みを浮かべて答えた。
「萌でいいよ。そういう森野くんもよく、遠く見てるじゃない?」
森野信二は意識しながらも顔が少し熱くなってきた。手に持った日誌
を机に置く。
「そう?俺は、いつも萌を見てたから」
「へへ。あたしもね、いつも森野くんを見てたんだよ」
上岡真と、神崎萌の友達は二人で、廊下の外から中の様子を仲良く伺
っている。
教室の中に居る、2人はというと。
神崎萌は森野信二の机のほうへ近づいていって、手を取って握った。
「文化祭、頑張ろうね☆」
森野信二の恋は、そう。まだ始まったばかり。



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